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コンサルティングの現場から見た医療・介護のリアルを解き明かす

対談:社会医療法人社団 三思会 理事長 野村 直樹 先生

time 2018/07/28

対談:社会医療法人社団 三思会 理事長 野村 直樹 先生

インタビュアー 金森のブログはこちらからどうぞ!

「思い」がなければ、スキルも伸びない

「やんちゃ」でなければ、面白くない

▼代替医療への思い

金森:

先生は海外展開含め、鍼灸院など様々な事業を手がけられていますが、とりわけ、鍼灸の分野というのは非常に珍しいと感じました。何かきっかけがおありになったのでしょうか?

野村氏:

そうですね、大きなきっかけとしましては、とうめい厚木クリニックを立ち上げた時に総合診療的にすべての患者さんを診る、ということをやらせて頂くようになりました。

色々な症状の患者さんがいらっしゃって、中には整形科的症状を持った患者さんもいらっしゃるのですが、僕はその分野のカンは無いので、整形外科に回して、痛みやその他の症状がある程度緩和される、ということを期待していたのですが、それが、なかなかうまくいかない。

とりあえずレントゲン撮って、異常があっても無くても痛み止めを出す、というような状況。そうした状況を鑑み、西洋医学では限界があるのかな、というのは感じていたんです。

富山県は薬で有名なところですが、東洋医学も有名なところなんです。日本の漢方の中心的な存在で、有名な先生もたくさん所属していらっしゃいますが、そういう経験もあったものですから、西洋医学だけでなく東洋医学も取り入れていきたいという想いがありました。

金森:

なるほど。そうした背景から鍼灸ということだったのですね。

野村氏:

はい。国内だとリハビリの中でやっていることが多かったので、中でも志ある方を探して、私の持っているものと併せられないかと検討していたんです。

西洋医学というのはあくまでも事後・発症後であって、もちろんそれはそれで非常に重要ですが、鍼灸の様に小康状態のケアもやっていかなければいけない、ということを強く感じたものですから。

金森:

今回のハンドリフレに関しても、そうしたものを取り入れようという試みからですか?

野村氏:

そうですね、特に認知症ケアに効果があるというところが厚愛地区医療介護連携会議のH29年度テーマに沿っていたため、お願いしました。

当然在宅の方の中には認知症の方もいらっしゃり、認知症にも西洋医学だけではやっていけない部分があります。

H29年度はこれら会議のテーマを認知症に絞ってやってきたのですが、ハンドリフレクソロジーが認知症にも良いということを聞いたことが今回の依頼のきっかけです。

金森:

私たちは日本で初めてハンドリフレクソロジーという分野で一般社団法人を立ち上げましたが、確かに、ハンドリフレクソロジーが「認知症ケア」に非常に有効だということは、現場の方々からの声で一番大きいように感じますね。

不穏症状が改善されたという声を頂く機会が多いです。

野村氏:

みなさんも職場に帰って活用してくださっていると思います。

▼患者目線?目的思考=包括的なケア

金森:

これまでお話を伺っていると、今に始まったことじゃなく、大学病院時代から一貫して先生の想いが表れているように感じました。

包括的にというところもそうではないでしょうか。

野村氏:

そうですね。患者さんの目線には立たなくてはいけないし、いろんな方法論、今までやってこなかったことをやっていかなくてはならないなと思っています。

金森:

いやぁ、野村先生はいい意味でお医者さんらしからぬお話をされますよね。僕は20年近くお医者さんと関わらせて頂く仕事をしてきましたけど、起業家の方とお話している気がしてきました!

野村氏:

あの、言っときますけどお医者さんとしての仕事が出来なかったわけではないですよ!笑

金森:

(笑) !はい。「外来では患者さんに人気の先生」と伺ってます。

野村氏:

大事なことは視野狭窄的にならないことです。

金森:

目的思考でしょうか。目的があって、そのための手段がある。

野村氏:

その通り。目的がないとやっていて面白くない。そのために何か新しいことを考えるということで面白くなりますし、そのために勉強しなくてはいけないと思っています。

金森:

・・・いやぁ。ファイターですね。

野村氏:

いや、面白いことが好きなだけです(笑)

ただ、それが患者さんの役に立つのでしたら、それが使命だと思いますね。

患者さんが痛がっている。でも問題はないからほっておく…ではなくて、痛いと言っていたら何とかしたいと思うのが普通でしょう。痛みを取ってあげて初めて、医者の立つ瀬があるわけですから。

そういう意味で一歩踏み込まないといけないのですが、西洋医学だけではこの一歩が踏み込めない。

金森:

口にされるのは容易かもしれませんが、行動に移される方は少ないですよね。

野村氏:

といっても、別に大きなことをしているわけではないのですが・・・まあ、固定観念だけでやっているのは面白くないと思いますから。やはり、色々なことをやって、役に立つ、仰るように目的のために役に立つのだったら、いろんなことをやってみたらいいと思いますし、そういうことを、大きな目線でやっていかないと、我々の様な組織にいると動けなくなっていくように思うんです。

時代もそろそろ変わってきていて、手元や目の前のことだけやっていればいいというわけにはいかなくなっているように思います。

金森:

確かに。私も大学病院をはじめとして、今まで安泰だった大きな規模の医療機関を担当させていただいていますが、そういうところでさえ「意識を変えて」という動きが出てきていますからね。

野村氏:

そうですね。私が運が良かったのは消化器外科であることです。いわば、がんの総本山のようなところで、そういう転機があるというのをたくさん見させてもらえたところですね。本当に、最期の最後まで診る、という風土のある医局でしたから、私も大いに共鳴・共感を持っていましたし、そういう経験をしてきたのも大きいかなと思っています。

今、病院でも緩和ケア病棟を作って、その専門部署も去年作りましたから、がんを中心に、いろんな方法を試していかなくてはなりません。

抗がん剤も効くようになってきましたし、自然治療も視野に入れて、病院全体もがんを一つの柱としてやっていく。

治らない状態のがんというものもあるわけですから、それも含めて全てを診てあげられるようにしていかないといけない。

金森:

それに反対を示す方もいらっしゃいませんでしたか?

野村氏:

反対というか、関心が無い方はいるかもしれませんね。

自分の得意なところだけでやっていけるっていう人はそれでいいと思います。

だけども面白くないと思います(笑)

金森:

なるほど(笑)、ホント探究者でいらっしゃいますよね。

お医者さまって一分野のスペシャリストじゃないですか。偏りがちな方も多いように思うのですが、本来それだけの素晴らしい知識や技術を発揮するためには対極に置かれがちな概念を内包しないと、活かせないような気がしております。

野村氏:

その通りだと思います。単なるスペシャリストだと・・・何回も言いますけど、面白くないから。

金森:

(笑)

野村氏:

私達何のためにやっているのかって言えば、やっぱり患者さんを助けるとか、苦しんでいるのを楽にするとか、それが目的の最重要なところにあるのですから。

そこにやりがいがあるものでもありますし。それが、医療が他の仕事とちょっと違うところかなと思います。

金森:

母も、こういう方に会ってほしかったですね。私はこういう医療人の方にお会いできなかったのが、野村證券辞めたきっかけだったので。

野村氏:

いや、志ある医師もいますよ。

ただ、その説明能力が低いことはあるかもしれません。それは個人というよりそのような方を育ててしまった環境が悪いように思います。

また、そんな大きなことを言い出したらアレなんですが(笑)

▼これからの医療業界に必要なもの

金森:

あれですね、ちょっと失礼な言い方ですけど、やんちゃそうですね、お若い時分は。

野村氏:

そんな風に見えます?

金森:

はい(笑)

野村氏:

私はね、皆さんにもやんちゃにしなさいと言っているんです。やんちゃなのが好き。いや、真面目なんですよ?真面目なんですけどやんちゃなんです。

金森:

いや、すごく伝わってきます (笑)

野村氏:

これまで日本の社会保障は非常に恵まれていたと思うんです。今までの封建制度の中で財政も安定し、それら環境の中では非常に恵まれていた。財源ある限り、やればやっただけの報酬があったわけです。

ところが時代が変わってきて、財源にある程度限界が出てきた中で、それだからと言って、患者が減るわけでもありません。そのような中でどんな風にやっていくかというのは、国は国で考えるかもしれませんが、現場は現場で考えなくてはいけない。

具体的にやっていく人間が考えなくてはいけないということはあります。

これから財源の厳しい中で増えていくがん患者さんをどう診て差し上げるのかっていうのは、どこの単位で責任を持って診ていくのかは、次の現場ではないですか。

アイデアを出して、現場の人間が動いていかなくてはいけないと思います。そういったものをしっかりやっていく必要があると思います。

金森:

ちなみに、こうした時代の中で本当に必要なものは何でしょうか?

野村氏:

人でしょうね。医療・介護、保健に関わる色々な同じ“目的”の下に集まってやること。多職種連携と言いますけど、連携と言うより、どこかに仲間意識みたいなものがある、一体感みたいなものかな。

そこには目的をはっきり掲げて、皆さんに認知してもらう仕掛けみたいなものが必要だと思います。

金森:

なるほど、弊社の人事評価制度を導入されるお客様は、憲法の様にちゃんと評価してくれるものを望まれますが、私たちは決してそう捉えているわけではないんです。作る過程からリーダーには行ってもらって、作る過程から一体感を持ち、同じ目的・理念を抱いた仲間として、人事評価制度を導入する過程と運用というフェーズを使い、上司・部下が話し合える状況をいかに作っていくかというツールとしてやっています。

野村氏:

それは素敵ですね。

金森:

ありがとうございます。

野村氏:

そうすればみんな、反対意見も出てこないでしょう。

金森:

そうなんです!仰る通りで、逆に敢えて“反乱分子”的な人も入れて、全体によくなっていくんです。

野村氏:

いいですね。自分達で作った物なら反対もしないし。

そういうものが欲しくなってきますね!

▼海外展開への思い。スキルは思いありきで磨かれる。

金森:

そんな中で、ミャンマーへ事業展開をなさっているということですが。

野村氏:

そうですね。日本の医療で、アジアに還元する活動をしたいという思いで展開しています。ただ国内でやることがそのまま通用するわけではないので、ミャンマーで海外の医療機関が活動するにあたり、会社として認可が必要です。三思会が日本の医療法人では一番手として認められることになり、そういう点ではパイオニアとして誇りに思っています。

金森:

先生は思いや理念という点についてはどのようにお考えですか?野村先生が「働くにあたって理念が大事だ」とおっしゃる姿に共感して入職なさる方も多いと伺いますが。

野村氏:

思いって大事なんですよね。最近は新入職員の方にも思いを大事にしてほしいという話をするんです。思いっていう言葉は少し抽象的になってしまうのかもしれませんが、でも、やっぱり思いなんでしょうね、自分の中では。

それを伝えようと努力をしていくということが自分を研鑽していくことに繋がると思います。思いがないと何もできませんから、スキルだけでもやっぱりダメ。思いの中でこそスキルは磨かれる。

金森:

さらに目的にかなうスキルになりますよね。

野村氏:

そうですね、思いの無いところに良いスキルは無いと思います。

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